あの日、もう一度「歌いたい」と思った。
挫折の先で見つけた、花耶が歌う理由。
過去と今を繋ぐ、知られざるヒストリー。
7歳で「歌手になりたい」と決めた。18歳の時に歌唱オーディション番組で日本一に。そして、20歳でメジャーデビューし、現在も多数のアニメタイアップ作品の主題歌を担当している。ここまでを並べると、順風満帆な物語に見える。だが花耶は一度だけ「歌うことが楽しくない」と感じた瞬間が、デビュー後にあった、と語る。2026年7月22日、TVアニメ2作品のダブルタイアップとなるTVアニメダブルタイアップシングル「Windmaker / 星降る夜の約束」をリリース。そして、9月12日には池袋w:ike329でリリース記念ワンマンライブ開催を控える。その前に、これまで語られてこなかった時間について聞いた。
「日本一」と呼ばれてから、デビューまでの2年9ヶ月
── 2019年、『のど自慢』のチャンピオン大会と歌唱オーディション番組『音楽チャンプ』で日本一になり、デビューは2022年。その間はおよそ3年弱、チャンピオンになってから、その間はどのような活動をしていましたか?
花耶:『のど自慢』の時に、太田プロダクションのマネージャーの方に声をかけてもらって、そこから所属という形になり、レーベルは、「テイチクエンタテインメント」さんに所属することになりました。そこからすぐに準備をして、デビューを発表する前に色々な楽曲制作からレコーディングをさせていただきました。当時は、楽曲レコーディングの経験があまりなかったので、一曲一曲、レコーディング前にプリプロをやらせていただき、本当に素敵な環境を準備していただきました。 また、楽曲制作に並行して、SNS面では、YouTubeで、カバー動画を週1くらいのペースでコンスタントに投稿できるように、たくさん撮影などもさせていただきました。 その中で、水面下でアルバム制作のためのレコーディングも行いました。そのアルバムに収録する楽曲の中には、洋楽をベースにした曲とかもあったので、私自身に洋楽のルーツがなかったりもしたので、たくさんの洋楽曲などを聴いてメモして。そういう経験や勉強をたくさんしていました。 当時まだ専門学生になったばかりということもあって、学校に通いながら、音楽を中心に色々な経験をさせていただいたことを覚えています。
7歳、ピアノ教室で見た「歌う人」
── 歌うことをやりだしたきっかけは?
花耶: 5歳からピアノを習っていたのですが、7歳の時にピアノの発表会で歌を歌っている方がいて、それを見て純粋にいいな、と思ったのがきっかけでした。「自分も歌いたい」と親に言って、毎週30分のピアノのレッスンの後、10分間の歌のコンクールに向けての練習をしていただきました。コンクールに出てみたら、賞をいただくことができて、それでより楽しくなって、歌手になりたいと思いました。
── 高校生の時に『のど自慢』とかに出だしたきっかけは?
花耶:小学校の時に出ていた山梨県内の童謡のコンクールなどで歌っていたのですが、さらに大きいコンクールを探していた時に、親がインターネットで童謡のコンクールを探してきてくれて。そのコンクールが、童謡コンクールの中で歴史が長い大会なのですが、そのコンクールに出ることになり、小学生の時に全国大会で2位、中学生の時に同じ大会で1位になったことがきっかけで、テレビ局のご担当の方から連絡があり、オーディションを受けて出場することになりました。
花耶:番組に出始めた時は「童謡女子高生」という名前で出させていただきました。それが最初の出演になります。
教室の空気── 「浮いていたかもしれない。」
── その後高校生の時に「日本一」を手にして、「日本一」になった時のクラスメイトの反応は?
花耶:「日本一」になった時は、確か高校2年生の時だったと思いますが、まだ高校生だったっていうのもあり、テレビ側のスタッフの方もストーリーを出していく中で、学校に収録に来ていました。 通っていた高校の科が音楽科という音楽専門のクラスで、クラスメイトも8人しかいないクラスにいて、音楽科全員でも30人くらいしかいない科に通っていたので。 「日本一」を手にしたタイミングでは、正直ちょっと浮いていたかもしれません(笑) ですが、その後は友達も先生も応援してくれて「一緒に頑張ろう」って仰ってくれて、『のど自慢』などに応援に来てくれたりしたこともありました。
「デビューしたら、こうなれる」と思っていた
── デビューが決まる前までの間、事務所とレーベルに所属して。その2年9ヶ月って結構長い時間だと思います。その多感な時期に動いている中で、デビューする実感がまだ湧かない時期っていうのはおそらくあったんじゃないかなと思うんですが、そういう時に、ちょっと直球の質問になってしまうのですが、「音楽をやめようかな」と思ったりした瞬間はなかったでしょうか?
花耶:デビューまではそんなマイナスなことを考えることはなかったです。とても前向きに歌を歌っていました。それこそ学業もあったので、学業の方にも身は入っていました。デビューに向けてポジティブな想いで、「デビューしたらこうなれる」とか、「やっとアーティストになれる」という思いでやっていました。
── デビューが決まった時に、デビュー決まったよっていうのを最初に伝えたのは。
花耶:最初に伝えたのは親でした。それこそ高校生の時も、毎日学校が終わって、学校で結構遅くまで練習していたりして。その後に帰ってきて、そこから親と一緒にカラオケ番組のためにカラオケに行ったりしていたので。だから親は本当に喜んでくれました。小さい頃からずっと応援してくれていたので、デビューを伝えられたことは本当に嬉しかったです。

デビュー曲と、いまの自分
── デビュー曲、「白馬の王子と薔薇色の私」。現在の曲の路線とはちょっと違う気がするんですが、デビュー時の曲を歌っている花耶さん自身と、今の花耶さん自身って違いはありますか?
花耶:パーソナルな部分はそこまで変わってはないのですが。ただ、今に比べてやはり経験がなかったこともあり、最初は本当にわからないことだらけでした。芸能界という場所に足を踏み入れて、分からないことが沢山あるというのは、すごく実感しました。その当時は分からないけど、時が進むにつれて、色々な経験をさせてもらったこともあって、当時は「本当に何も分かってなかったのだな」って思うくらいでした。
── では、当時のことを一度振り返ってもらい、当時の自分が分からなかった部分を振り返ってもらって、一つ大きなトピックをあげるとしたら。
花耶:デビューしてからは、分からないことだらけでしたが、目まぐるしく歌の活動をしていたこともあって、本当にがむしゃらに走っていました。だから、分からかったからこそ、デビューしたら大きな場所で歌えると思っていたし、たくさんお客さんが来てくれると思っていました。でも実際はそんなことなくて。リリースイベントとかキャンペーンでいろんな全国を回って、それでも来てくれるお客さんは2人とか3人とか、っていうステージもありました。そのギャップに、自分が描いていた理想と現実のギャップについていけなくて。どんどん、辛いってなって、思うようになっていきました。
歌うことは本当に楽しくて、7歳からずっと歌手になりたかったのに、「楽しくない」って初めて感じたのが、デビューしてからだったので。今だから言えますが、当時の自分にとって大きな挫折だったし、経験でした。
── それは今、払拭されていますか?
花耶:されています!今は「負けるものか」みたいな気持ちがとても強いです。やっぱり歌うことが好きですし。自分の人生を振り返っても、歌うことしかしてこなかったので。絶対にこれからも音楽を、そして歌うことを続けたいし、その歌をいろんな人に届けたいって思っているので。今でもうまくいかないこともあるし、思い描いていた25歳(現在)とは全然違うのですが、それでも前向きに、”今やれることをやろう”という風に、毎日思っています!
メルボルンの路上で、知らない人が集まってきた
── 歌うことに挫折した時期、もう一度歌を歌いたいという気持ちに戻ってこられたきっかけは何でしたでしょうか?
花耶:過去に大きな挫折をした時に、一人で海外旅行に行く決断をして、お金もいらないし、もういいやと思って、帰ってくることをやめようと思ったくらいに、思い切って一人で海外旅行に行きました。そしたら、気持ちが大きくリフレッシュされて。「悩んでいることなんて、ほんとちっぽけでどうでもいいや」と思ったことを覚えています。
メルボルンに行ったんですが、夜に路上ライブをしてる人がいて。ギター一本で歌っている女性の方がいらっしゃって、その人の音楽を聴いていたら、シンプルに凄いいいなって思って。
── 何時間聴いていましたか?
花耶:時間は覚えてないのですが、ずっと、ぼーっと座って聴いていました。いろんな人が聴いていましたし、海外特有の雰囲気もあるかもしれないのですけど、みんなが楽しそうに応援していたりしていました。そういうのを見て純粋に「いいな」って思って。後日メルボルンの路上で、ライブをしている男の人に話しかけて、「自分も歌いたいからマイク貸してください」って言ってマイクを借りました。「私、歌手だから」と言いました(笑)。その路上ライブで、一人で3曲くらい歌いました。自分のこと知らないたくさんの人たちが、歌い始めたらたくさん来て応援してくれて。その時に心の底から「よし頑張ろう」と思って帰国しました。今の私があるのは、それがきっかけかもしれません。
習字と、そろばんと、絶対音感
── 書道が準2段、そろばんが初段、ピアノと。習い事をいろいろやってきたということで、たくさん身につけることをやってきている方なのかなっていう印象もあるのですが。習い事をやっている中で、今の人生にとって何か身についているものってあったりしますか。
花耶:まず習字は、今も人前で何か文字を書くときに褒められたりすることもあるので、やっていてよかったな、やらせてもらえていてよかったなって思います。そろばんは、とにかく忍耐力というか。結構長いことやっていたのですが、習字は小学生だけの数年間だけやっていて、そろばんは小学生から高校生になるくらいまで。集中力が身についたと思っています。特に歌っている時の集中力は、そういうところから来ているのかなって思います。
点数がついた場所と、つかない場所
── その後、『のど自慢』や『音楽チャンプ』など、点数と順位がつくところで歌ってきていると思います。現在はアーティストという世界の中で活動していると、他の方と比べられたり、自分が選ばれたりしないといけない仕事ですが、歌う時の緊張感とか、その趣って何か違います?
花耶:小さい時は絶対に負けたくなくて。とにかく誰にも負けたくないっていう気持ちが強かった。カラオケの番組とかも、負けた時はとても悔しくて。点数で負けたことが、やっぱり悔しくて。
今は小さい頃に比べて楽観的になり、自分の感情の中で柔らかくなるものは柔らかくなって、冷静に分析できるようになったのかなと思います。
── 点数を取る、いい点数を取らないといけないみたいなのと、今はいろんな人に届けるっていうところだと思うのですが。その中で、「歌うまいですね」って今までもずっと言われてきたと思うのですが、「花耶さんの歌、うまいですね」って言われるのと、「花耶さんの歌、好きです」って言われるのって、どっちが嬉しいとかありますか?
花耶:好きです、の方がいいです!
── その理由は?
花耶:言葉が難しいのですが、「好き」と思ってくれている人はたくさんライブに来てくれたりしますが、そういう人たちが、「好き」だから来てくれていると思うと、やはり嬉しいです。好きかどうかが認められた基準かなって、自分の中であって。「好き」と言われた方が嬉しいです。
── うまさって、自分の表現の上で邪魔になることってありますか?
花耶:考えたことないですね。結構、こう見えて構築タイプです。ちゃんと感情も乗せるけど、それでも、どう歌いたいとか、自分の中で考えなくても自然にあって。ここからここの音程の飛び方だったらどう歌いたいとか、どれくらい息を混ぜたいとか。そういうのをすごく考えて、今の私の歌に身についているタイプです。

ルーツ── 本田美奈子.、May J.、そして「生き様」
── ちょっと話が逸れるのですが、好きなアーティストっていますか?
花耶:昔は、それこそルーツになっているのが、本田美奈子.さん。アーティストでもあり、本当に歌を歌う歌姫みたいな人。私が中学生の時に本で出会って。本田美奈子.さんの人生を書いた本があったんですが、それを読んで、より好きになりました。
歌で尊敬しているのは、May J.さんですね。歌い方が好きです。自分がまだ人前で歌を歌っていない時にたくさん聴いて、May J.さんのように歌いたい。聴きすぎて身につくくらいに聴き込みました。ただ、自分の中では特別このアーティストみたいになりたい、と言うのは今までなくて。「こういう自分になりたい」と、自分自身の理想像を描いてきました。
一人暮らしの部屋で出会ったアニメ
── 趣味がアニメ鑑賞。
花耶:それこそ上京して一人暮らしを始めて、一人が寂しくなって出会ったのがアニメでした。その時に、一日中見ていて、たとえば『進撃の巨人』だとしたら、数日で見終わる、みたいな感じで、とんでもない量のアニメを、起きてから寝るまでずっと見ていた時期が、何年間かありました。
最近は、ありがたいことに毎日忙しくさせてもらっているので、ゆっくりと観る時間がないのですが、観始めたら本当に止まらないタイプです。
── 今は主題歌を歌う側の人になっているじゃないですか。主題歌の話が来た時って、まず何をしますか?
花耶:何かの主題歌を担当させていただくということは私自身の夢だったので、本当に嬉しくて。毎回お話をいただく度に、感謝と喜びで心が満ちていっています。いただいたアニメ主題歌は、すぐに原作を読んでしっかりと世界観を理解して、歌に反映できるようにしています。楽曲は、プロデューサーがいますので、自分で一から作っているわけではないんですが、作詞を担当できるものは、原作を読み込んで、その物語の言葉を紡ぎながら歌詞に投影できるように努力しています。
ワンマンライブという場所
── リリースの時とか何周年とか、そういうタイミングでワンマンライブをやるじゃないですか。対バンと違ってワンマンって全員が自分のことを見に来ているライブの中で、まずモチベーションや気持ちはどのような感じですが?
花耶:一番は、今応援してくれている人がこの場所に来てくれている、というのを毎回思っています。今の自分にはこの人たちがいてくれている、ありがとう、と言う感謝を伝えたい。まだ自分自身、新人という枠の中で、「花耶の歌が好き」というその気持ちでライブに運んで来てくれている人がほとんどなので。応援してくれている人たちへ、ちゃんと恩返しをしたいと思ってライブをさせていただいております。
まだまだ大きい会場でできたりはしてないので、一つ一つのライブの中で、「こうしなきゃ」という明確な目標を改めて感じるのがこれまでのワンマンでした。自分への戒めもありながら、自分の立ち位置と、もっとこうならないと、という更に高い目標設定できる場所です。
── 普通の対バンとかだと初めての人たちもいるじゃないですか。で、さっきも言ったけど、ワンマンは自分のことを見に来てくれる人たちがいる。この違いって自分の中であります?
花耶:そうですね。ファンの皆さんが私の音楽と歌が好きで、会いに来てくれる、そんな空間が好きです。私もファンの皆さんのことが大好きですし。
── 逆に対バンの時はどうですか。
花耶:対バンはもうメラメラしていて。誰も自分のことを知らない人に、歌をいいと思ってもらえるか、音楽を楽しんでもらえるか、興味を持ってくれるかっていうところにフォーカスして歌っています。一人でも多くの人に、一人でも気になってくれたらいいなっていう気持ち。CDを買って会いに来てくれたら嬉しいですし、ある意味、戦う気持ちでライブをやっています。
アニメから来る人、ずっといる人
── 9/12に開催されるライブは、リリースのワンマンということですが、この新曲をアニメから知ってくれた人とかもいるとして、そういう人たちが新たにライブに来てくれたときに、もちろんアニメのことをイメージした上で曲を聴いてくると思います。花耶さんがそういう人たちに届けたい思いってあります?
花耶:アニメから入ってきてくれた人は、私のライブを見て「また来たい」と単純に思ってくれたらいいなっていうのが一番です。「また来たい」って思ったら、好きになってくれている状態だと思うので。そういう風な感情になれるライブ構成したいと思っていますし、アニメから入ってきてくれて、ライブに来てくれる人がいたら、とても嬉しいです。
── 今回のワンマンは、どういう一日にしたいですか?一言でお願い致します。
花耶:「約束」という言葉が一番当てはまるかもしれません。ファンのみんなとはずっと、自分の今できる最高のパフォーマンスをして、もっと大きい景色を一緒に見たいというのもありますし、こんなにたくさんの応援してくれていることも、私がみんなの気持ちを絶対背負っていかなきゃ、と思っています。今いるファンのみんなと一緒に、もっと高みを目指して、ずっと歌いたいと思ってますし、ずっと私のライブや音楽に帰ってきてくれたら嬉しいと思います。
女性としての矜持
── 『GIRLS特区!!』というサイトが、お伝えしたとおり女性特化型の情報サイトになります。これはすべてのインタビューで聞いているのですが、”女性としての生き方”、”こうありたい”みたいな、矜持みたいなのってありますか。
花耶:信念だけはしっかり持って生きたいっていうのが、私の生き方です。自分の生き様っていうのは絶対によれちゃいけないと思っているし、一回の人生で、もったいないなって思う後悔はしたくないので。「これをやりたい」とか「こうしたい」とか、芯をしっかり持ってこれからも生きていきたいと思っています。
9月12日に来る人へ
── 最後に、『GIRLS特区!!』を見ている皆様に、そしてワンマンライブに来る方にメッセージを。
花耶:私の全身全霊をかけて、花耶の音楽が最高の音楽だ、という時間を作りたいですし、何よりも私の歌を届けたいと思っています。なので、気兼ねなく会いに来てほしい、と伝えたいです。
私のライブは決まりもないし、こうやらなきゃいけないということもない、みんな自由に楽しんでもらえたらいいなと思っています。とにかく私は歌で、声で、ちゃんと人の心に届く歌を歌いたいと思って歌っているので、この気持ちを受取りに来てくれたら嬉しいです。

Interview / Photo:柴 正明
INFORMATION
公演名:花耶 「Windmaker / 星降る夜の約束」リリース記念ワンマンライブ
日程:2026年9月12日(土)
会場:池袋w:ike329
時間:一部 OPEN 13:00 / START 14:00 二部 OPEN 17:30 / START 18:30
券種:Sチケット ¥8,000+税 / Aチケット ¥5,000+税
チケット:公演ページ