OFF STAGE Vol.012 下北沢 Cafe / Coffee

珈琲店◯◯

Coffee Stand ◯◯ — Since 1985
Selected by Artist A

歌詞が書けなくなったときに来る場所。
マスターが何も聞いてこないのがちょうどいい。

Date2026.04.20
Area下北沢
CategoryCafe / Coffee
Read12 min
— Interview —

About This Place

珈琲店◯◯ / カウンター席のArtist A

この店をいつ知ったんですか?

デビューしてすぐの夏、近くのスタジオに通っていた頃に偶然見つけました。レッスン帰りに「珈琲」って看板だけ書いてある古い店構えに惹かれて入ったのが最初です。もう5年、月に何度も通っています。

この店のどこが特別ですか?

マスターが私に何も聞いてこないこと。「お久しぶりです」も「最近どうですか」もない。私が静かに座ってる時間を、この店は邪魔しないでくれる。それが私には大事です。

どんな時に来ることが多いですか?

歌詞が書けない時。家にいると煮詰まる、でもスタジオには行きたくない。そういう中間の場所がここです。窓際の席で珈琲を一杯飲んで、何も書けなくても、なんとなく気持ちが整う。それで満足して帰ります。

お気に入りの席は?

奥のカウンターから2つ目の席。マスターの手元が見える位置で、外の通りからは見えにくい。気がついたらそこが「私の席」になっていました。たまに先客がいると、軽く動揺します(笑)。

この記事では、Artist Aが5年間通い続ける「珈琲店◯◯」を、彼女自身の言葉と編集部の取材で深く紹介する。
1985年から続くこの店の歴史、彼女との関係、そして彼女の音楽がここで生まれた瞬間について。

— Access —

Where to find

下北沢 駅 南口
珈琲店◯◯
アクセス
最寄り 小田急線・京王井の頭線「下北沢」駅 南口
徒歩 南口を出て商店街を直進、3つ目の角を右折して4分
目印 手書きの「珈琲」看板(茶色の木製)
バス 京王バス「下北沢」停留所より徒歩6分
— The Shop —

珈琲店◯◯

— Story —

1985年から続く、街角の小さな喫茶店

下北沢駅南口から徒歩4分、住宅街の角に佇む小さな喫茶店「珈琲店◯◯」。1985年に創業し、現在は2代目のマスターが店を継いでいる。豆は店内で焙煎、メニューはコーヒーとトーストのみ。40年以上、その潔さを変えていない。

店内に入ると、まず焙煎香が出迎える。カウンター席が6席、奥に小さな2人用テーブルが2卓。BGMはなく、マスターが豆を挽く音と、客同士の小さな会話だけが空気を満たす。その空気感に惹かれて、ライターやミュージシャン、デザイナーといった「ひとりで集中したい人々」が、この店を見つけては通い詰めるようになった。Artist Aもその一人だ。

彼女がこの店を知ったのは、デビュー直後の夏。当時通っていた近くのスタジオから歩ける距離にあり、レッスン帰りに偶然立ち寄ったのが始まりだった。「最初は単に近かったから入っただけ。でも、頼んだコーヒーを一口飲んで、今までに飲んだことのない味だと思った。それから、ほとんど月に何度も通っています」。

この店に座っていると、自分が音楽家であることを忘れられる。
ただ珈琲を飲んでいる人になれる。
それが、私には必要な時間だった。 — Artist A

店の奥、彼女が指定した「私の席」

5年通い続けた今でも、彼女とマスターの間には決まった会話のパターンがある。注文は「いつもの」だけ。「いつもの」は、深煎りのブレンドコーヒーと、バタートースト。マスターは豆を挽き始め、彼女は奥のカウンター席に向かう。それで取材日も、同じだった。

新作アルバム『夜明け前』の制作中、彼女は週に2〜3回ペースでこの店に通っていたという。歌詞が書けない日に、ノートと鉛筆だけ持って来る。何も書かずに帰る日もあれば、店を出る頃には1曲分の歌詞が完成している日もある。「ここで書いた歌詞は全部で7曲分。今回のアルバムの半分以上が、この店から生まれました」。

— From the Owner —

Master's Voice

店主 ・ ◯◯ さん
2代目オーナー / 焙煎担当 / 1985年から

父が始めた店を、私が継いでもう20年になります。常連さんは70代、80代の方が多いんですが、ここ数年で20代の若い人が少しずつ増えてきました。SNSで知ってくれる人もいるし、彼女のような音楽家の方も来てくれるようになって。

彼女が初めて来た日のことは、覚えています。雨の日でした。傘を持ってなくて、髪が濡れたまま入ってきて、何も言わずにカウンター席に座った。「コーヒー」とだけ言って、それで深煎りを淹れた。一口飲んで、しばらく動かなかった。たぶん、何かを考えていたんだと思います。

それから5年、ほとんど何も話していません。彼女が新しいアルバムを出したことも、ニュースで知りました。でも、それでいいんです。ここは、彼女が音楽家じゃなくなる場所だから。私がそれを邪魔したら、この店じゃなくなってしまう。

Shop Information
店名珈琲店◯◯ / Coffee Stand ◯◯
住所東京都世田谷区北沢2-◯-◯
営業時間10:00 - 19:00 (L.O. 18:30)
定休日水曜日 / 第3木曜日
予算¥600〜¥1,200
席数カウンター6席 / テーブル2卓(4席)
予約不可(先着順)
支払い現金のみ
Wi-Fiなし
電源なし
創業1985年(昭和60年)
Her Pick

深煎りブレンドと、
バタートースト

Artist Aが5年間オーダーし続けている「いつもの」セット。「これ以上のメニューを試したことがない。試す必要がないから」。彼女の言葉どおり、シンプルで完成された一皿。

— Soundtrack —

For This Place

Curated by Artist A
珈琲店◯◯で
聴きたい
5曲
1
夜明け前
Artist A — 自分の曲
4:48
2
珈琲とラジオ
Artist X
3:42
3
雨の日の喫茶店
Artist Y
5:15
4
small talk
Artist Z
3:28
5
夜の縁
Artist A — 自分の曲
3:42
この店がなかったら、今のアルバムはなかったと思う。
場所が、人を作る。 — Artist A
— Explore —

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Written by
編集部 / 田中

OFF STAGE 担当ライター。アーティストと街、店、文化の関係を取材。連載スタートから全話を執筆。

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