デビュー5年、活動休止1年。誰もが待ち望んだ復帰は、かつての彼女とはまるで違うかたちで訪れた。新作アルバム『夜明け前』はその1年間の記録であり、これからへの宣言でもある。スタジオで何度も泣いたと話す彼女の言葉は、静かで、確かだった。

約束の時間ぴったりに、彼女は現れた。深いネイビーのジャケットに白いシャツ。1年前に最後に見たときよりも、明らかに何かが違っていた。落ち着いている、というよりは——「もう焦っていない」、その表情だった。

待ち合わせ場所に選ばれたのは、彼女が新作の制作中、ほとんど毎日通っていたという都内の小さなスタジオ。「ここがなければ、たぶん完成しなかった」と笑う。

沈黙の1年間に起きていたこと

活動休止を発表したとき、何を考えていましたか?

正直に言うと、もう続けられないかもしれない、と思っていました。それまでの4年間、走り続けて、自分の中で何が大切なのかが見えなくなっていて。リリース、ツアー、プロモーション、また次の制作。その繰り返しの中で、自分の音楽が自分のものじゃなくなっていく感覚があったんです。

そこから1年、どう過ごしていたんですか?

最初の3か月は本当に何もしていませんでした。音楽すら聴けなかった時期があって。そのあと少しずつ、誰の曲でもない、ただ好きな音を聴くということから始めて。気づいたら、自分でも何か作りたいという気持ちが戻ってきていた、という感じです。

自分が誰かに見られている、聴かれているという前提を、一度全部捨てたかったんです。
その先で出てきた音は、やっぱり自分のものでした。 — Artist Name

『夜明け前』というタイトル

新作のタイトルは制作の最後の最後に決まった。最初は別のタイトル候補があったが、全曲を聴き返したときに「これは夜明け前の音だ」とプロデューサーに言われ、その瞬間に決まったという。

スタジオでの制作風景。「ここがなければ、たぶん完成しなかった」

夜明け前、というのは何の比喩ですか?

暗いままじゃないけど、まだ光ってもいない、その間の時間のことです。私のこの1年は、ほとんどそういう時間でした。何かが終わってもいないし、新しく始まってもいない。でも、確かに夜は明けようとしている。その不安と希望が混ざった感じを、音にしたかった。

これからのこと

全国ツアーが決定し、来年には海外公演も予定されている。「これからは、走らない」と彼女は言う。「走り続けることが正しいと思っていた4年間と違って、今は止まることも作ることのうちだと知った。だから、ゆっくり、でも確実に続けていきたい」。

最後に、いま音楽を続けるか迷っている若いアーティストに向けて何か言いたいことはありますか、と聞いた。

続けることが正解じゃないって、私は思ってます。
でも、辞めなかった理由が一つでもあるなら、それを大事にしてほしい。
音楽は、待っていてくれる場所だから。 — Artist Name

取材後、彼女はスタジオに戻っていった。次の一曲を録るために。